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2005年1月17日 (月)

たかとり10周年誌まえがき

<はじめに>

ちょうど寝入りばなだった。ベッドの上で体が揺れ動くのを感じた。するとすぐ建物が軋む音が聞こえ、部屋ごと飛ばされるのではないかと思うほどの大きな揺れが始まった。「あかん」とひとこと声に出したのを覚えている。布団を頭からかぶり揺れが収まるのを待った。長かった。怖かった。ベッドから這い出そうとするが真っ暗であらゆるものが床に飛び散り足を置く場もなかった。何とか部屋の戸口まで進んで行き力いっぱい扉をこじ開けた。2階の窓から外を見たが真っ暗闇で何も見えなかった。ただ遠くで火の手が3箇所あがっているのが見えた。

夢を見ているのだと思った。
夢であってほしかった。
ほっぺたをつねったら痛かった。

階段を下りようとしたが土壁の残骸で埋まり滑り台のようになっていた。庭に出た。教会にいた8人は無事だった。空が白んできた。聖堂がぺちゃんこに潰れていた。周辺の家々も2階が1階になって傾いていた。大変なことになってしまったんだとやっと正気に戻ってきた。足元を見たら一部地面が陥没し始めていた。部屋から畳をはがし庭に敷き詰めた。門の外には裸足でパジャマ姿のまま布団を頭からかぶった人たちが歩き始めていた。頭から血を流している赤ちゃんを抱えているお母さんもいた。庭の畳の上で休むように呼びかけた。20人ほど集まった。目をつぶってもう一度2階の自分の部屋に戻り靴下を全部取り出した。しばらくすると火の手が迫ってきた。集まった人たちは避難場へとまた歩き始めた。もう一度建物の中に入り大事なものを鞄に詰めた。教会が燃え盛る中、ようやく消防用のホースがたどり着いた。消防士さんがノズルを持って火を消しに掛かるのだがほとんど水が出ない。よく見るとホースの途中が破れて噴水のようになっていた。噴水の出口を肩に抱えて別のところを消した。鎮火すると後は煙だった。夜にはやっと中学校の庭に避難した。

一日目のすべては教会の壁の中のことだった。しばらくたってから知ったことがあった。地域の人たちは病院の寝たきりの人やつぶれた家に埋まっている人を救出していた。穴があったら入りたかった。

二日目の朝教会に戻ってきた。多くのボランティアの人たちの支えによってこの10年の歩みは始まった。被災者の多くもボランティアだった。救援基地は壁に囲まれていたが、救援活動は壁を越えた。地域とNGOと教会がひとつになってまちづくりひとづくりの小さな芽がつき始めた。

夢を見ているのだと思った。
ほっぺたをつねったら痛かった。
この夢はこれからもずっと見続けてゆきたい。

<おわりに>

10年間これまで共にいて下さってほんとうにありがとうございました。みなさまの優しさが私たちの大きなエネルギー源であったことは言うまでもありません。震災で始まった「たかとりから世界へ」を大切に育ててゆくことでお世話になったみなさまのお返しとしたいと思います。これからもどうぞよろしくお願いいたします。

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