ミックスルーツ
コンクラーベ(教皇選挙)が開催された。教皇に選ばれるのは歴史的にはイタリアの人が多いのだが、最近ではポーランド、ドイツ、アルゼンチンと続いた。今度はアジアやアフリカから選出されるのかもしれないと思った。白い煙が上がり、選出された新教皇が姿を現した。緊張した表情の中にも穏やかな笑顔があった。ホッとした、と同時に、シカゴ出身と聞きビックリした。今や“世界のビックリ箱”になっているアメリカから教皇が選ばれたのだった。
アメリカには移民排斥の動きがある。そもそも移民で成り立ってきた国のはずなのに、多民族なルーツの人々が集まっている国なのに、何故にと思う。 “クレオール Creole”という言葉がある。簡単に言うと混じり合いなのだが、異なるものが一つになって新しいものが誕生するというようなイメージの言葉だ。植民地や奴隷といった痛ましい歴史の中にあっても、それを克服しようとしてきたエネルギーが詰まっている。新教皇に選ばれたプレヴォスト枢機卿のルーツもとても豊かだ。母方の祖母はルイジアナ・クレオール(白人と黒人の文化が混じり合っている)で祖父がカリブ海イスパニョーラ島(ハイチ/ドミニカ)からの移民だ。父親はイタリアのシシリー島からの移民で、実に“ミックスルーツ”なのだ。それにしても“ファミリーヒストリー”番組のようによく調べる人もいるもので、家族もそのことを知らなかったようだが、それを知った教皇は自らを“移民の子孫”と あらためて名乗ったようだ。
そもそもどこの出身かなんて言うこと自体“井の中の蛙”のように思える。ルーツをたどれば人類は皆アフリカ出身なのだから。でも今は、身内志向がますます強くなり、他を排斥することで自らを守ろうとするような感じだ。ワールドワイドでものごとを考え、多文化が身をもって理解できるであろう“ミックスルーツ”な人たちが、地球規模での人類の平和へと導いてくれることを願いたい。教会自体も“ミックスルーツ”で成り立ってきた。歴史的にはユダヤから巣立ち “ミックスルーツ”な旅へとキリスト教は歩みだした。三位一体の神に共通の希望を持ちながら、旅を続ける多文化共同体だ。“教会”という漢字表記は好きではない。教えるって誰が誰に何を教えるのだろう。それよりも“協会”の方がいい。十字架(受難と復活)の希望のもとに、それぞれのルーツを持つ人や文化が互いを大切にしながら平和のために働く“力”の共同体だ。“協会”の方がキリスト教的ではないか。教えてあげようという上から目線な“教会”の歴史の中で、文化を侵略してきた負の遺産もたくさんあるが、本来のあり方はそうではないはずだ。
私たちが目指すのは、それぞれの歴史の中でつくられてきた文化を尊重し交流することで、ともに平和を模索し、そして新たな文化を創造していく、地球規模での“クレオール”だ。“ミックスルーツ” それは平和な未来を生み出し創造する原動力ではないのか。
三田教会 神田裕
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